国語教師×読書

公立高校国語教諭が、読んだ本について徒然に書き綴ります。

夏だ!海だ!読解力だ!!

みなさんこんにちは。はこせんです。

死ぬほど暑くなりましたね。僕は熱中症対策として家から出ることをやめました。

クーラーガンガンの部屋で、ベッドに寝転がんで音楽かけながら今この記事を書いています。

こんな幸せが永遠に続けばいいなと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい。本日紹介する本はこちらです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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AI vs 教科書が読めない子どもたち

です。

 

 

 

 

 

調査によると、ショッキングな事実が分かりました。

「日本の中高生の多くは中学校の教科書を正しく読み取ることができない」

この結果に向き合ったのが、著者である新井紀子氏です。

新井氏は、2011年から「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトを推進されている国立情報学研究所のセンター長です。

そんな著者が描く、未来とは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この本の前半部分はAIについての考察がメインなので、中々理解しにくい部分もありました。難しかったです。

ですが「シンギュラリティ」という言葉については興味深い考察がされていました。

 

 

新井氏は「シンギュラリティ」という言葉を「技術的特異点」、もっと噛み砕いて言うと「真の意味でのAIが自律的に自分自身よりも能力の高い真の意味でのAIを作り出すことができるようになった地点」として定義しています。

「AIが人間の能力を超える地点」ということをこのように定義されています。

この観点から考えると、新井氏は「シンギュラリティは到来しない」と断言しています。

テクノフォビアの皆さん、朗報ですね。よかったですね。

 

 

 

 

というのも、AIは意味を理解しないそうなんですね。

 

 

 

 

 

 

 

はい。もう一度言います。AIは意味を理解しません

 

 

 

 

 

 

 

どういうことかと言うと、こういうことです。

初めて東京に来た僕は、なんだか美味しいイタリアンが食べたくなりました。

そこで手元のSiriにこう話しかけます。

 

「Hey Siri!美味しいイタリアンの店教えて!」

 

優秀なSiriは、都内の有名イタリアンの店を教えてくれるわけですね。

でもSiriに教えてもらった店を見てみても、ピンとくる店が無い。

尖った僕は、今度はSiriにこう話しかけます。

 

「Hey Siri!まずいイタリアンの店教えて!」

 

なんと、優秀なSiriはさきほど「美味しいイタリアンの店」として紹介した店を、再び僕に推薦してくるのです。

 

 

 

 

 

このように、AIは語の持つ意味を理解しえないのです

 

 

「AIがハリーポッターの続きを書いた」という記事もあります。

内容自体はめちゃくちゃだったみたいですが、それも「AIは意味を理解しえない」ということによるのではないでしょうか。

 

参考までにどうぞ。

ciatr.jp

 ※この記事では「技術的特異点はもうすぐそこ!」と述べられていますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい。本書の前半部分はこのようにAIについての説明となっていました。

ですが、僕が個人的に面白いなと思ったのは第3章からになります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新井氏は、中高生たちの基礎読解力を調査するために独自でRST(リーディングスキルテスト)を開発しました。

 

本書に実際に掲載されているRSTを少しだけ見てみましょう。

 

 

 

 

 

 

問 次の文を読みなさい。

 仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカオセアニアに、イスラム教は北アフリカ西アジア中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

 オセアニアに広がっているのは(   )である。

ヒンドゥー教  ②キリスト教  ③イスラム教  ④仏教

 

 

 

 

 

 

 

はい。正解はもちろん②キリスト教ですね。

この問題では、中学生の38%、高校生の28%が不正解の選択肢を選んでしまったというのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問 次の文を読みなさい。

 Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

 Alexandraの愛称は(   )である。

①Alex  ②Alexander  ③男性  ④女性

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答えは①です。先ほどの問題よりも簡単な文構造です。

 

 

 

では、中高生の正答率も先ほどの問題より高いのか。

高校生は35%が、中学生はなんと62%が不正解の選択肢を選んでしまったのです。

中学1年生に至っては77%が不正解だというのです。四択なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

本書にはこのようなショッキングな調査結果が他にも載っています。

ここから導き出された結論は、

RST受検の高校の平均能力値と高校の偏差値には高い相関が見られるが、それはそもそも基礎読解力が低いと偏差値の高い高校には入れないことを意味する。

です。

 

 

 

 

 

さて、では何が読解力を左右するのでしょうか。

新井氏の調査によれば

 

・読書週間

・学習習慣

・得意科目

スマホ使用

・新聞購読の有無

・ニュースメディア

・性別

 

などは、全て目立った相関が見られなかっそうです。

まぁ、これはすべてアンケート調査で行ったもので子供達が自身を客観的に判断できていたかどうかを疑問に感じた新井氏はアンケート調査での原因調査を諦めたそうです。

 

 

 

 

 

 

いずれにせよ、子供達には

教科書を読んで正確に理解する能力

を身につけさせる必要があるわけです。

語彙力も無論そうですが、文構造を正確に読み取り、指示語の内容を的確に掴み、具体例が何を意味するのかを判断する力。そういった力が必要なのではないでしょうか

また、そういった基礎読解力を子供達に身につけさせることこそが学校教育において今最も必要なのではないでしょうか。

それは「国語」という教科だけでなく、全ての教科で横断的に行われるべきことのはずです。

 

 

では、どのようにすれば子供達の基礎読解力を伸ばすことができるのでしょうか。

最近話題に上がるAL(アクティブラーニング)は、子供達の読解力を伸ばすことと繋がるのでしょうか。

 

 

結論から言うと、新井氏はALのことを「絵に描いた餅」として批判しています。

ALを正解に辿り着く手法を身につけさせるために行う活動として位置づけるのであれば、教科書を正確に読むことのできない子供達では推論が正しく行われるわけがなく、それでは正答までたどり着くことができない。というわけです。

 

議論や討論など、様々な形でALを行ったとして、正解に辿り着くことができなかった子供達も正解を知ることが必要となります。

しかし、読解力の無い状態ではその正解でさえ調べ、理解することが難しいのです。

「言語活動の充実」が叫ばれていますが、言語活動を行う以前の問題だと指摘しているのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまできて、本書が出した結論。

 

求められるのは意味を理解できる人材である。

 

これです。

 

意味を理解しなくとも行うことのできる労働は。意味を理解しえないAIが文句も言わずにやってくれる世の中になるでしょう。

では、AIにはできず、人間にできる仕事とはどういったものなのでしょうか。

 

AIは新しいものを生み出すことはできないと言われています。

クリエイティブな仕事をすることのできる人材こそ、これからの世の中で必要とされるようになります。

AIに代替されない人材を育成すること、その為にはまず、子供達の読解力を育む必要があるのです。

学校教育の担う役割は、途方も無く大きいのです。

ですが、私たち教員はこのことから目をそらしてはいけません。

シンギュラリティは到来せずとも、AIが子供達の未来を黒く塗りつぶしてしまう可能性もあると私は考えます。

AIと人間とが共存することのできる世界を創る為には、教育の力が必要になるのです。